解決事例Case

企業法務の解決事例① 役員株主の相続人に対する株式の売渡請求及び裁判所に対する株式価格決定の申立により、故役員との買取合意価格での株式の買い取りに成功した事例

(1)相談前

依頼会社では、永年勤務してくれた役員への感謝の意を込めて、会社株式を額面で譲渡することが慣習化していました。
株式を譲り受けた役員は、会社を退社したり、死亡したときには、譲り受けたのと同額(額面)で株式を会社に譲り渡すことを合意し、その代わりに保有期間内に株式配当を受領することができました。
しかし、退社時・死亡時に譲り受け額と同額で会社に株式を売り渡すという合意は明確に書面化はされていませんでした。
このような状況下で、株式を保有していたある役員が亡くなりましたが、その相続人が、会社からの額面での株式売り渡し請求を拒絶しました。
そこで、会社は、相続人に対して会社法176条1項に基づき総会決議により株式の売渡請求を行ない、さらに裁判所に対し、株式売買価格決定の申立を行った。

(2)相談後

裁判において、株式買取価格については、引受人である役員と会社と間で合意があり、相続人も当然その合意を承継していると主張しました。しかし第1審裁判所は当方のこの主張を認めず、株価の鑑定を行った上で、時価額を株式価格であると認定しました。
この決定を不服として、高裁に抗告申立を行いました。
抗告審においては、株式が取得者の死亡により包括承継された本件の場合、たとえ譲渡の際に交わした合意が当事者(相続人)を拘束するとしても、何ら取引の安全を害することにはならないことや、そもそも亡くなった役員自身、額面での株式の買い取り制度に深く関わっていたことなどを強く訴えました。
その結果、抗告審は第1審の決定を覆し、株式買取価格は、当初の合意どおり、額面によることが妥当であると判断しました。
同結論は、その後最高裁判所においても是認され、結果,買取価格は当方主張のとおり、額面によるべきことが確定したのです。

(3)ポイント

ご依頼者の会社では、現代表者の先代(現社長の父)のころから、会社のために尽くしてくれた役員への感謝の意を込めて、株式を当該役員に譲渡し、その存命の間、会社との一体感を持って貰い、また、配当を受け取ってもらっていました。
このような先代社長の役員への感謝の想いを実体化したのが、額面による株式の譲渡及びその後の買取という制度でした。
ところが今回の裁判では、そのような想いが逆手に取られ、高額での買い取りが相続人より主張されたのです。
裁判の結果、こちらの主張が全面的に認められ、額面での買取が実施されました。

現代表者も「父の役員への想いが認められた」と、大変喜んでいただけました。
金額の面だけでなく、経営者のこのような想いを裁判の結果に反映できたことが、望外の喜びとして心に残っています。

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刑事事件の解決事例① 【強制わいせつ致傷を無罪へ】強制わいせつ致傷のえん罪により逮捕された依頼者を、無罪にした事例

(1)相談前

早朝帰宅しようとしていた女性が道路上で背後から襲われ、わいせつな行為を受けた上怪我を負いました。
後日、本件の依頼者である近所に住んでいた男性が逮捕されました。
依頼者は否認していましたが、強制わいせつ致傷でそのまま起訴されてしまいました。

(2)相談後

本件で依頼者が疑われたのは、被害女性が、犯人が依頼者の家の方に逃げ込んだのを見たこと、そして何より、警察の面割り手続※で、被害者が依頼者を犯人であると特定したからでした。

※…事件関係者に、被疑者を含めた複数人の顔写真や映像を見せ被疑者と思われる人物を選ばせること

しかしながらこの面割りは、9枚の男性の写真の内、被疑者とされていた依頼者の写真だけが他とは異なっていました。
他の写真は全て正面を向いている写真なのに、依頼者の写真だけは横向きで、隠し撮りされたような画質であるなど、面割り写真自体に被害者を誘導する要因が含まれていたのです。

しかも、当時依頼者は自宅の2階で家族と同じ部屋に寝ていましたが、もし依頼者が犯人であるならば、家族を起こさないようにこっそり家を出なければなりません。
自宅1階には依頼者の両親が住んでいましたが、事件当日母親は既に起きており、また良く吠える犬も飼っていて、依頼者が家族に気づかれずに家を出ることは事実上困難であったことを公判で丁寧に主張しました。

また被害者に対しては、早朝まだ暗い中で突然後ろから犯人に抱きつかれて、犯人の顔をはっきり見ていなかったことなどを尋問で引き出しました。

結果、依頼者は判決で無罪となり確定しました。

(3)ポイント

そもそも本件は、依頼者が犯行を行うことは不可能に近い事案で、検察官の起訴自体が不当なものであると考えました。
特に警察で行われた被害者による面割りは、手続自体に相当な問題があり、被害者が誘導された可能性が極めて高いと感じました。
依頼者はそういった状況の中で逮捕・勾留され、20日間に渡って取り調べを受け、起訴されてしまったのです。

長い裁判の結果、何とか依頼者を無罪とすることができましたが、自営業であった依頼者は、逮捕・勾留された結果、仕事や信用を失いました。
裁判で無罪となっても、一度失った信用を回復することは極めて難しいことでした。
改めて、違法・不当な捜査によるえん罪を繰り返してはならないと感じた事案でした。

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刑事事件の解決事例② 【放火未遂罪を不起訴へ】違法・不当な取り調べに抗議し、放火未遂罪で逮捕された依頼者を不起訴にした事例

(1)相談前

マンションの郵便受けに火の付いた新聞紙が投げ込まれ、同じマンションに住む高齢の男性が逮捕されました。

(2)相談後

確かに逮捕された男性と被害があった部屋に住んでいた人は、マンションの管理を巡って以前トラブルがありましたが、被疑者となった男性は事件に関与していないと主張していました。

そこで、違法・不当な取調べにより自白が強制されないように、取調べ全過程の録画・録音を捜査機関に求めると共に、厳しい取調べに対して抗議文を送付するなどの対応を取りました。
結果、被疑者は不起訴となりました。

(3)ポイント

直接的な証拠がない事件で、被疑者は自白強要を伴った厳しい取調べに晒されていました。

そこで、このような違法・不当な取調べがなされないように、捜査機関に厳重に申入れなどを行い、被疑者がうその自白(やっていない事件をやったと言わされること)を強要されることを防ぎました。

結果、被疑者男性は不起訴となりました。
男性は高齢で、長期の勾留には精神的・肉体的に耐えられない状況であっただけに、不起訴となった時にはホッと胸を撫で下ろしました。

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刑事事件の解決事例③ 【痴漢えん罪を不起訴へ】通勤電車内での痴漢えん罪で逮捕された依頼者を、不起訴にした事例

(1)相談前

会社に出勤途中の男性が、通勤電車内で痴漢したと疑われ、逮捕・勾留されました。
ご家族からの依頼を受けて、対応しました。

(2)相談後

検察官による勾留延長請求に対して、異議の申立を行いました。

申立においては、
・被疑者が当日大事な会議を控えている状況で痴漢など行うはずがないこと
・座っている乗客の面前で立っていた被疑者男性に、痴漢を行うことは不可能であったこと
・男性が両手でカバンを持っていたこと
等を裁判所に訴えました。

その結果、準抗告が認められ、勾留延長が取り消されました。
男性は釈放され、その後不起訴となりました。

(3)ポイント

被疑者はどう考えても痴漢を行うような人物ではありませんでした。
しかし、女性からの一方的な言い分で被疑者は逮捕され、さらに勾留されてしまいました。
家族や会社の支えもあり、被疑者は自分の主張を言い通し、幸いに勾留延長に対する準抗告が認められ、不起訴を勝ち取ることができました。

近時痴漢えん罪事件が多発していますが、捜査弁護においてしっかりと戦い続けることにより、良い結果を生むことができた事案でした。

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