シリーズ;コロナ時代の企業危機管理
テレワーク導入!労務管理はどうすればよい?
はじめに
一般に「テレワーク」とは、インターネットなどのICTを活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方を言います。具体的には、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務などが掲げられます。これまでも経産省では、働き方改革の一環としてテレワークを推奨してきましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまでテレワークを導入してこなかった企業でも、その導入が急務となりました。
しかし、社内規程などを整備せず、単に社員に在宅勤務を命ずるだけでは、法的に問題が生じます。テレワークを導入するには、それに見合った労務管理を構築しなければなりません。
就業規則の変更
テレワークを導入するに際して、ある程度の規模の企業では、就業規則にテレワーク勤務に関する規定を置く必要があります。この場合、従来の就業規則にテレワークに関する規定を追加するのでも、新たに「テレワーク勤務規程」といった個別の規程を定めるのでも構いませんが、いずれにしても規程を整備したことを所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法89条)。なお、従業員数が10名以下の企業では労働基準監督署への届出義務はありませんが、労使協定を結んだり、労働条件通知書で労働者に変更内容を告知することは必要です。
テレワーク導入の留意点
テレワークにおいても当然に労働基準法などの労働法令は適用されます。特に以下の点は注意が必要です。
① 労働条件の明示
事業主である企業は、労働契約締結に際し、就業の場所を明示する必要があります(労働基準法施行規則5条2項)。そこで、在宅勤務の場合にも、就業場所として従業員の自宅等を明示する必要があります。
② 労働時間の把握
事業主は、労働時間を適正に管理するため、従業員の労働日ごとの始業・就業時刻を確認し、これを記録しなければなりません(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準・平成13.4.6基発第339号)。そのためにスケジュール管理ツール等を積極的に活用することが求められます。
③ 業績評価
業績評価や人事管理について、会社に実際に出社している社員と異なる取扱いをする場合には、その内容を従業員に説明すると共に、就業規則の変更も行う必要があります(労働基準法89条2号)。適正な業務評価のために、電子メール・チャット・WEB会議等を柔軟に利用して、日々の業務の成果や進捗状況を把握することが必要です。
④ 通信費等の費用負担
在宅テレワークにおける通信費等の費用負担については、従業員の自宅の既存のWifi等を利用して、その費用を従業員に負担させることも可能ですが、その場合には従業員に対して丁寧な説明を行うと共に、就業規則に規定しておく必要があります(労働基準法89条1項5号)。また、自宅の電気、水道、通信費などの負担については、業務使用分との区別が事実上困難なため、テレワーク勤務手当に含むなどの方策が必要です。
テレワーク時の安全管理
テレワーク勤務の場合でも、通常の労働者と同様に、企業は優良な健康状態を維持させる義務があります。特にテレワークでは、日常の生活と仕事との境目が曖昧になる傾向がありますから、労働時間の管理や面接指導・ストレスチェック等の重要度が増します。
なお、テレワーク時に労働災害が発生した場合には、労働災害補償保険法の適用があり、労働災害に関する保険給付を受けることができます。例えば、自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていた従業員が、いったん作業場所を離席した後、作業場所に戻った際に転倒して怪我を負った場合には、業務災害と認められた例があります。
「企業のリスク管理その他のご相談は、WILL法律事務所(TEL06-6130-8008)弁護士森直也まで。
『本HP連載を見た』とお伝えいただければ、初回相談(電話or面談)を1時間まで無料とさせていただきます」