シリーズ;コロナ時代の企業危機管理
コロナによる事業縮小! 雇用調整はどのように行う?
はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の中、従前の経営状態を維持することができず、やむなく事業規模を縮小せざるを得ない企業も多く見受けられます。そのような場合に、労働者をどのように処遇すればよいのでしょうか。
事業縮小による労働者への退職勧奨
新型コロナウイルス感染症拡大による経営悪化により、やむを得ず雇用調整を行わざるを得ない状況に追い込まれた場合、企業としてはまず、雇用調整助成金の活用など、政府の支援策を利用してなんとか雇用を維持することを模索すべきです。
しかしそれでも雇用を維持できない状況となった場合、まずは「合意退職」が可能かを検討することとなります。使用者から労働者に退職を促し(退職勧奨)、労使間の合意によって労働契約を解消(合意退職)するという流れです。ただし「退職勧奨」は、法律を根拠とする行為ではないため、それに応じるか否かはあくまで労働者の自由であり、労働者の自由な意思決定を妨げるような退職勧奨は権利侵害となる可能性があり、注意が必要です。説得の手段・態様などが社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するような場合(多人数による、または長時間に及ぶ面談の強要、本人が拒絶した場合に繰り返し勧奨を行うなど)には、不法行為(民法第709条)とされる場合もあります。
なお、雇用調整の手段として、希望退職者を募集する方法もあります。希望退職制度は、退職金の増額といった一定の優遇措置を伴うもので、一方的な退職勧奨に比してリスクは少ないと解されます。
業績悪化に伴う整理解雇
これまで本連載で繰り返し述べているように、労働者の同意を前提としない、使用者による一方的な労働契約の解約、すなわち「解雇」については、労働者の権利を侵害しないように細心の注意が必要であり、そのことはコロナ禍により事業縮小するに伴って解雇を行う場合も同様です。
すなわち、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法第16条)。
この点、コロナ禍による業績悪化に伴い、労働者を解雇する場合には、整理解雇ということになりますが、その場合でも、会社は以下の基準を満たすことが必要です。
(1)人員整理を行う必要性
(2)できる限り解雇を回避するための措置が尽くされているか
(3)解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であるか
(4)労働組合との協議や労働者への説明が行われているか
上記の内、(1)人員整理を行う必要性としては、コロナ禍により店舗の営業を中止したり、営業時間を短縮したりしたために売り上げが減少したことから赤字に陥り、いくつかの店舗を閉鎖することとなったため、人員に余剰が生じた場合などが考えられます。
また、(2)解雇回避措置については、一般論として余剰人員の配転・出向・転籍、一時休業、残業の削減、新規採用の見送り、希望退職者の募集、役員報酬の削減などの措置を講じて、なお整理解雇がやむを得ないという事情が必要です。これに加え、コロナ禍による整理解雇においては、前述の通り政府が準備している各種助成措置を積極的に利用することが前提となるでしょう。
有期雇用契約(期間満了による「雇い止め」)
有期雇用契約を期間満了により更新しないこと、すなわち、雇止めとする場合、
⑴ 有期労働契約が反復して更新されており無期雇用契約と同視することができる場合
⑵ 労働者が有期雇用契約の更新を期待することについて合理的理由がある場合
には、解雇と同様の法的規制に服します(労働契約法第19条)。
したがって、上記に該当する労働者を雇止めとする場合には、無期雇用契約労働者を解雇する場合と同様に、整理解雇の4要素を意識してその適法性を判断する必要があります。
他方有期雇用契約労働者を契約期間中に解雇する場合には「やむを得ない事由」が必要とされます(労働契約法第17条)。コロナ禍による事業規模縮小により、期間満了を待たず直ちに雇用を終了せざるを得ない重大な事由が必要とされるでしょう。
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