シリーズ;コロナ時代の企業危機管理
社員がコロナ感染!労災認定される?

はじめに

もし社員がコロナに感染する事態が生じた場合、労災保険給付の対象となるでしょうか。



労災給付について(一般論)

一般に、労働者が業務に起因して疾病に罹患した場合(業務起因性)には、労働者災害補償保険法(以下「労災法」といいます)に基づき療養補償給付や休業補償給付等を受給することができます(労災法12条の8第2項、労働基準法75条ないし77条)。この際、「業務起因性」の判断については、個別の事案ごとに感染経路、業務との関連性等の実情を踏まえるものとされています。



新型コロナウイルス感染症の場合の特例

今般の新型コロナウイルス感染症の拡大に応じて、労災給付要件である「業務起因性」については、その認定基準が緩和されています。すなわち、本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという本感染症の特性に鑑みた適切な対応が必要であるとし、当分の間、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とされるものとされています(厚生労働省労働基準局保障課長発・令和2年12月1日付「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」)。
国内における労働者の感染に対する具体的運用は、以下のとおりです。

1.医療従事者等
医師・看護師や介護の業務に従事する者については、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

2.医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となる。

3.医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されないもの
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが高いと考えられる労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断する(この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断することとされている。)。

特に上記3の場合、類型的に感染リスクが高い業務に従事する労働者が感染した場合には、たとえ感染経路が特定されなかったとしても、それだけで業務起因性は否定されず、個々の事案に応じて判断されることになります。

なお、感染リスクが高い労働環境の例としては、①複数の感染者が確認された労働環境下での業務や、②顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務が挙げられています。これまでに労災が認定された事例を見ると、例えば、会社の事務室で執務していたが、同室内に他にも感染した者が稼働していた例や、感染経路は特定されなかったが、発症前に日々数十名と接客の上、商品説明等を行う業務に従事していた例などが掲げられています。これらの例を見る限り、例示されているような労働環境下で勤務している者が罹患した場合、広く業務起因性が認められていることが伺えます(例えば小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務など)。



労災請求手続における会社の役割

労災請求手続は、労働者本人が行う必要がありますが、当該労働者が保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合、事業主である会社は、請求人の症状を確認しつつ、適宜、請求書の作成等への助力を行う必要があります(労働者災害補償保険法施行規則第23条第1項「保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない」)。



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